GIPレポート 2022年度
2022年度 「海外長期インターンシップ」(GIP:Global Internship Program) スタート!
2022年度のグローバル・インターンシップ・プログラム(GIP)は、コロナ禍により現地(中国)での留学・企業実習ができないため、一部授業をのぞくすべてのプログラムをオンラインで実施しています。今年度は経済学科3年生2名、経営学科3年生4名の計6名が参加し、2月から7月までの半年間、経済経営学部ならではの視点と専門性を活かした多彩なプログラムを実施しています。
【2022年度 GIPスケジュール】
2022年2月3日
第1回オリエンテーション(オンライン)
2022年2月8日~3月22日
2022年3月25日
第2回オリエンテーション
2022年4月8日~5月24日
2022年4月12日~5月31日
2022年6月
2022年7月下旬
2022年10月5日
2月〜3月:中国語学習
GIPでは南通大学(中国 江蘇省南通市)のオンライン授業と中国・上海に拠点を置く日系企業でのオンラインインターンシップを予定しています。そのための事前学習の一つとして、2月~3月の2か月間、中国語を学習しました。参加学生の半数以上が中国語は初めてということもあり、中国語独特の四声などの発音に苦労していましたが、「中国語で自己紹介ができるようになる」ことを目標に、発音、文法の基礎を重点的に学習しました。最終回では各学生が中国語で自己紹介を行い、約2か月の中国語学習を締め括りました。
中国語学習(オンライン)の様子
【中国語学習を終えて】
- ・中国語は同じ音でも抑揚の違いで意味が変わってしまうためとても難しかったが、学習の過程はとても楽しかった。中国語学習を通して中国文化や中国人の価値観について話を聞くことができ、中国への理解も深まった。(経済学科3年生)
- ・中国語学習のまとめとして自己紹介文をPowerPointで発表したが、授業で学んだ文法を活かすことができ、達成感を感じることができた。(経営学科3年生)
4月〜5月:南通大学オンライン授業と交流セッション
4月から5月末まで、京都先端科学大学と中国の南通大学をオンラインでつなぎ、南通大学の先生方による「中国経済」と「中国文化」の2科目の講義を受講しました。
【中国経済】
「一帯一路」や「電子商取引」「中国のイノベーション」などをキーワードに、中国経済の発展の歴史や現状について郭瑛先生に解説いただきました。授業は日本語で行われましたが、講義資料はすべて中国語で書かれているため、参考資料の事前の読み込みや復習は必須でした。学生は中国のオンライン授業アプリ(課堂派)を利用し、中国の視点からの解説に熱心に耳を傾けていました。
【中国文化】
中国文化は、封小芹先生が講義を担当されました。本年5月に創立110周年を迎えた南通大学の歴史やキャンパス紹介、「春節」、「端午節」などの年中行事や、飲食、教育、結婚などの慣習について、幅広く解説いただきました。この講義が行われていた4月~5月は、新型コロナウイルス感染症再拡大のため、南通大学がある江蘇省南通市でもロックダウンの措置がとられており、毎週の授業を通して現地のリアルな情報をオンラインで見聞きできたことは貴重な経験になりました。最終授業では、参加した各学生が、南通大学日本語学科生にSNSを通じてインタビューした情報をもとに、「日中の教育事情」に関する発表を行いました。
南通大学日本語学科生との交流セッション
4月26日、5月10日、および5月17日の3回にわたり、京都先端科学大学GIP参加学生と、南通大学日本語学科生とのオンライン交流セッションを行いました。日中の大学生活やエンタメ文化、若者で流行しているものなどについて、両大学の代表が発表しました。また毎回のセッションでは、日中の学生が数人ずつオンライン上のブレイクアウトルームに分かれてディスカッションを行い、互いに日常生活や文化について積極的に意見を交換し、交流を深めました。
交流セッションの様子
【南通大学のオンライン授業を終えて】
- ・中国からの視点で中国の政策、経済を学ぶことができ、とても新鮮で興味深かった。(経営学科3年生)
- ・中国と日本の文化には相違点と類似点があり、とても面白い情報が多かった。(経営学科3年生)
- ・交流セッションを通して、お互いの国をリスペクトし、自分の価値観を確立することが大切だと学んだ。(経済学科3年生)
- ・コロナ禍で中国には行けなかったが、同年代の中国人学生とオンラインで交流ができ、とても貴重な経験となった。(経営学科3年生)
4月〜5月:本学教員による授業(事前学習)
6月から始まる上海での企業実習(オンライン インターン)の事前学習として、国際関係、中国経済、企業法務・税務、経営分析などに関する基礎知識の修得のため、4月~5月の7週間にわたって本学教員による授業を受けました。
【事前学習】
本学教員による授業の内容は次の通りです。
第1回 「中国の国際関係について」 西片聡哉教授
第2回 「中国経済の基礎知識」 土屋貴裕准教授
第3回 「東アジア ダイナミズムと労働移動」 カオ・グェット准教授
第4回 「企業法務・税務の基本」 村田淑子教授
第5回 「人事の経済学」 難波敏彦講師
第6回 「経営分析の基礎」 付馨准教授
第7回 「インターンシップに向けての目標設定」 西片聡哉教授
【事前学習を終えて】
・リレー形式での授業はそれぞれ特色のあるもので大変興味深かった。幅広い知識を身に付けることができたと実感している。(経済学科3年生)
・事前学習で得た経済、経営の知識を、6月からの企業実習(オンライン インターン)にも活かしていきたい。(経営学科3年生)
6月~: 企業実習(オンライン インターン)スタート
企業実習(オンライン インターン)が始まりました。中国(上海)に進出されている企業の皆様からそれぞれの事業内容について学んでいます。さらに海外で働くために必要なビジネススキルの基本を学びます。
【企業実習(オンライン インターン】
7月末:企業実習(オンラインインターンシップ)終了
5月末から7月末までの約2か月間、学生たちはオンライン企業インターンシップに臨みました。今年度ご協力いただいた受入企業様は、①Nidecグループの日電産(上海)管理有限公司様、同グループの日本電産(浙江)有限公司様、②マイツグループの上海マイツ(上海邁伊茲咨詢有限公司)様、③FNAグループのファクトリーネットワークチャイナ(FNAチャイナ、工場網信息科技(上海)有限公司)様です。
オンライン企業インターンシップでは、まず各受入企業の社員の皆様にそれぞれの海外事業の業務内容をご説明いただき、海外で働くために必要な能力やスキルについても幅広くご教示いただきました。また海外で働く厳しさや、やりがい、また海外生活ならではの出来事などについてご経験を踏まえてお話しいただきました。
さらに本年度は各企業様から参加学生に対して、経済経営学部の専門性を意識した実践的な企業経営や業務に関する課題を課していただきました。学生たちは各企業の皆様とオンラインセッションを重ね、オフラインでも学生間で議論しながら、それぞれの課題に取り組みました。
参加学生がまとめたレポートと感想
①Nidecグループ:日電産(上海)管理有限公司様・日本電産(浙江)有限公司様
(京都に本社を置く世界No.1総合モーターメーカーの日本電産グループ)
第1回セッションでは日本電産(浙江)有限公司の社員の皆様より会社概要と業務内容の説明をいただき、さまざまな質問に丁寧に答えてくださいました。
第2回~第5回セッションでは、日電産(上海)管理有限公司の人事部、監査部、法務部、コンプライアンス部、財務部、税務部の各部門の皆様から事前にいただいていた課題に学生がそれぞれ取り組み、その結果についてパワーポイントを使って発表しました。課題内容は、実際に起こった業務事例への対応、幹部育成プログラムの提案、キャッシュフローの見通しについてなど、かなり実践的でハードな内容でしたが、学生どうしで協力し合いながら全ての課題に粘り強く取り組みました。そして発表後に社員の皆様からフィードバックと評価をいただき、自分たちの不足点に気づき、学びをより深めることができました。このプログラム全体を通して、主体的に行動し・学び・話し合い・考え・発表するという企業で働く際に求められる能力について、体験的に理解することができました。
【インターンシップを終えて】
・すべての課題が、学生が主体的に取り組まなければ解決できない内容でした。そのため、正直なところ大変でしたが、実習先の皆様から熱心なフィードバックをいただけたので、頑張ることができました。終わってみると、これまでの学生生活で、一番成長できた期間でした。(経済学科3年生)
・オンラインのインターンシップでしたが非常に多くの学びがあり、自分の成長につながったと思います。(経営学科3年生)
・日電産(上海)管理有限公司の皆様ならびに日本電産(浙江)有限公司の皆様、ありがとうございました。
②マイツグループ:上海マイツ(上海邁伊茲咨詢有限公司)様
(日本、中国、アジアに展開する会計・税務、アウトソーシングの経営コンサルティング)
初回セッションでは上海マイツ様の事業内容、海外(主に中国)における労働条件や日常生活について教えていただきました。第2回セッションでは日本と中国の企業文化の違いや政策、法制度、さらに今後の中国市場の変化やロックダウンの上海の様子について教えていただき、企業が中国へ進出する際のメリット・デメリットを学ぶことができました。第3回セッションでは「海外で飲食店を出店する際に経営者として留意すること」について学生たちが発表し、出店、経営コストや現地の文化に合わせたメニューや内装などについてフィードバックをいただき、社会人として海外で求められる能力についても教えていただきました。第4回セッションでは財務・会計と財務諸表の読み方、中国の税制度について教えていただいた後、学生たちが財務諸表の考察について発表を行い、会計の専門的な知識を学ぶことができました。最終回のセッションでは、学生たちが各セッションで学んだことや今後の具体的な目標について発表し、このインターンシッププログラム全体を通して何を得ることができたのかを再確認することができました。
【インターンシップを終えて】
・今回の上海マイツ様とのインターンシップセッションを通して、特に「社会人として必要とされる能力」と「今後のキャリアの決め方」について学ぶことができ、とても貴重な体験をさせていただきました。(経済学科3年生)
・日本で生まれ育った私にとって、海外で生活しながら働くということは、想像もできないことでした。実際に上海で働いておられる方のお話を伺うことで、中国における会計の専門的な知識から、異文化とふれあう楽しさや難しさなど、幅広く実体験を学ぶことができました。今後の就職活動だけでなくその後の人生まで、ずっと大切にしたい経験となりました。(経営学科3年生)
・上海マイツの皆様、ありがとうございました。
③FNAグループ:ファクトリーネットワークチャイナ(FNAチャイナ)様
(アジア製造業のビジネスマッチング、市場調査、海外進出企業の支援サービス)
第1回セッションではFNAチャイナの皆様に中国での事業の概要を説明していただきました。第2回セッションでは、FNAチャイナ各事業部の皆様に具体的な業務内容をそれぞれご説明いただきました。第3回〜4回のセッションでは、中国のカーボンニュートラルの現状について学びました。また、学生が日本の新エネルギー自動車サプライヤーについて調べ、その内容を発表しました。最終回のセッションでは、乗用車の軽量化、知能化をキーとして自動車市場の現状分析と発展予測を行い、学生たちがそれぞれレポートにまとめました。
FNAチャイナの皆様は、企業経営に関係するさまざまな独自の「情報」に基づいて、中国に進出する日本企業の支援を行っておられますが、「情報」に対する考え方や敏感さが一般の人たちとは全く違うことに気づかされ、企業の海外進出や経営における正確な「情報」の重要性を学ぶことができました。
【インターンシップを終えて】
・身近な自動車のなかでも新エネルギー自動車について多く知ることができ、とても充実したセッションでした。(経営学科3年生)
・自分視点ではなく、相手視点で物事を考え、伝えることが大切だと感じました。(経営学科3年生)
・FNAチャイナの皆様、大きな学びの機会を与えてくださり、ありがとうございました。今後も追求心を持って学びや挑戦を続けていきます。(経営学科3年生)
10月:GIP成果報告会と修了式
2022年10月5日、京都太秦キャンパスにおいて成果報告会と修了式が行われました。
本年2~7月の半年間、中国語学習や中国 南通大学のオンライン授業、そしてオンライン海外企業実習を通じて学んだ成果を経済経営学部3年生6名の参加学生がパワーポイントを用いたプレゼンテーション形式で報告しました。
上海マイツ(上海邁伊茲咨詢有限公司)様のインターンシップに参加した学生たちは、1. 南通大学での学び (中国文化と学生交流)、2. 上海マイツ 企業オンライン実習(日中ビジネス、コンサル業務、財務会計業務)について報告しました。参加学生は、南通大学でのオンライン授業によって日中の文化や常識の違いについて、また企業オンラインインターン実習を通じてコンサルティングや財務会計の基礎知識、海外ビジネスで求められるコミュニケーション能力などについて、体験的に学ぶことができたようです。
ファクトリーネットワークチャイナ(FNAチャイナ)様のインターンシップに参加した学生たちは、1. 中国経済について、2. オンライン企業実習(事業研究、業務理解、日中の新エネルギー自動車市場の発展状況及び予測)について、3. 今後の学びについて報告しました。学生たちは、どのような業務であっても事前の準備を怠らず、余裕をもって業務計画を立て、常に業務関連情報を正確に把握することが重要であると認識できたようです。そして今回のGIPのプログラム全体を通して、改めて現地の言語(中国語)を習得することの難しさと大切さが理解できたとのことでした。
Nidecグループの日電産(上海)管理有限公司様・日本電産(浙江)有限公司様のインターンシップに参加した学生たちは、1. 法務、2. コンプライアンス、3. 監査、4. 税務、5. 人事、6. 財務の各部門から課された課題と、それぞれの課題への取り組みについて報告しました。参加学生は、海外企業において経済経営学部の専門性に通ずる部門業務の一端を実践的に学ぶという経験を通じて、主体的に学ぶ姿勢や、社内や取引先の方々と徹底して意見交換する重要さを学んだとのことでした。また業務上の課題に取り組む際には、取引先など相手方が「何を求めているのか」をまず正しく理解することが重要だと改めて感じたようです。
最後に参加学生全員が、各自の「目標達成度の振り返り」と「今後の抱負」を発表し、本年度の経済経営学部GIPの修了式に臨みました。
学生実習受入企業の皆様ならびに中国 南通大学の皆様
本年度 本学経済経営学部 「海外長期インターンシップ」は無事に終了いたしました。ご協力を賜り誠にありがとうございました。
GIPを終えて
大学生活のなかでもかなりタフなプログラムであった。学生のうちからこのような経験を積むことで、今後に必ず活かせると感じている。これまで「自分のしたいこと」が分からず、様々なプログラムに参加していたのだが、GIPを通じて現時点で自分がしたいことを見つけることができた。参加してよかった!!(経営学科3年生)
南通大学のオンライン授業では、中国の文化や経済以外にも流行を学んだり、中国の同じ年齢の学生と交流したりできたことで海外に興味を持つことができた。企業実習ではこれまでの授業で受けたことがないレベルの難しい課題に取り組んだことで、スキルの面でも人間性の面でも成長することができた。成果報告会を終えた今は、GIPに参加して良かったと満足している。(経済学科3年生)
長期間のプログラムの中には、難しい課題や大変なことがたくさんあったが、その一つひとつを乗り越えたことで、力が付き成長を感じることができた。また、GIPの良い点は、自分と一緒になって頑張ってくれる仲間や先生がいるところだ。彼らのおかげで、最後まで楽しかった。(経済学科3年生)
来年度GIPの参加を検討している学生に向けて
GIPは語学研修と海外インターンシップの長期間のプログラムで、非常に貴重な体験をすることができます。海外に興味のある人や海外インターンシップに参加したい人、学生時代に何かを頑張りたい人は是非とも参加することをお勧めします。参加する学生さんは、時にはしんどいこともあると思いますが、最後まで頑張ってください。(経済学科3年生)
2022年度報告
2022年度GIPの全プログラムを修了した学生6名には、「現代アジア事情A」と「海外企業実務A」の2科目合計8単位が授与されました。
その後、学生6名は個々のレベルに応じたHSK(中国政府認定中国語能力試験)を受験しました。
(経済経営学部教授 GIP推進委員 山下勤)