講義「バイオ環境と社会のつながり」は、主に入学したばかりの1年生を対象に開講しています。自然環境の劣化や生産環境の荒廃、地域社会の弱体化などの諸問題に実社会で取り組んでいるキーパーソンをお招きし、問題の社会的背景や実践事例を伺うことで、今後4年間のバイオ環境学部での学びの方向性を各人が考察するための試みです。
2019年6月4日(火)にシリーズ講義「バイオ環境と社会のつながり」第8回が開催されました。今回は、日吉森林組合理事 森林再生アドバイザー 湯浅勲様から「今日は森林のことを考えてみよう」というテーマでお話しをいただきました。
野菜や米は1年ごとに植え付けと管理、収穫が完結するのですが、樹木、森林は何十年というスパンの中で仕事がなされます。かつて高度経済成長による住宅需要を予感した植林は、現在、ようやく収穫時期となりましたが、経済環境の変遷により必ずしも投資額に見合う収益を確保しにくくなりました。一方で、近年は、森林の水源涵養、土砂防止、生物多様性条約、木材生産、保全文化など公益的機能の大きさが見直されています。
学生たちは、日本の森林の現状をどのように捉えたのでしょうか。ヨーロッパでは、国民合意の林業振興政策に基づき、森林管理がなされています。森林に対する国民意識(価値観)の違いは、どこにあるのでしょうか。湯浅様がおっしゃった「適切な手入れにより森林は蘇る」は、経済的活動により達成されるのか、社会的に共有できる価値感の醸成により達成されるのか、学生たちの問題意識を喚起するまたとない機会となりました。
(バイオ環境学部 教授 藤井孝夫)