2021年10月21日(木)4限の「女性企業家講座」(京都太秦キャンパス)では、
主な経歴等
1998年 京都大学工学研究科 合成・生物化学専攻修士課程卒業
1998年 住友化学工業株式会社入社 有機合成研究所配属
2002年 同社退職
2002年 リラクゼーションサロンTournesol 開業
2004年 女性起業家ネットワーク わくらく設立
2005年 有限会社パワーエンハンスメント設立
2007年~2009年 京都大学経営管理大学院主催 再チャレンジのための女性起業家プログラム運営
サポート(文部科学省推進プログラム)
2011年 関西ベンチャー学会 理事就任
2011年 関西ベンチャー学会内に女性起業家研究部会を設立
2013年 関西ベンチャー学会 副会長就任(~2015年)
2014年 近畿経済産業局「女性起業家プロジェクト」委員就任
2018年 女性専用コワーキングスペース開設
2019年 創業機運醸成賞(中小企業庁)受賞
1 起業のきっかけ
女性の起業支援、コンサルティングの仕事をはじめて17年。今まで約1200の起業を支援してきた。
もともと起業をめざしたわけではなかった。大学卒業後は住友化学に入社して、医薬品の開発にたずさわった。医薬品の分野は1000個中3個しか薬にならないほど結果がでにくい。悶々としていたときに、アロマセラピーの資格取得スクールに土日に通った。人から直接「気持ちいいわ。ありがとう」と言われる仕事がしたいと思い、会社を辞めて、アロマのホームサロンをオープンした。営業経験も接客経験もないままに起業してしまい、なかなかお客さんが来てくれなかった。
事業を大きくするために必要な要素は、①技術力(商品力)②経営力③営業力の3つ。資格取得スクールは技術しか教えてくれず、経営力と営業力が足りなかった。
①技術力(商品力)
お金を払ってもらうために、どれくらいのクオリティのものを提供すべきかということ。例えば、マッサージをする仕事だったら、上手にマッサージをして体の疲れをとる技術があること。
②経営力
3年後・5年後に会社をどのようにしたいかをイメージして、それを今の行動に落とし込む力。例えば、3年後に月100万円稼ぎたいということであれば、10万円の商品を5個どう売るのか、その商品を作るためにはこうしなければならないなど。
③営業力
あなたから買いたいと思ってもらう力。商品の説明が上手ということと、クロージングが上手であることは違う。この人から買いたいと思わせるような人柄を伝えるとか、相手の背中を押すことも必要。
資格を取って起業したがどうしたらよいかわからない仲間と、心斎橋筋商店街などの人通りの多い場所で体験ができるイベントをした。その仲間と、チラシの作り方などのノウハウを共有したりもした。すると、はじめは5人だったのが20人と仲間が増えていったので、会費制の組織として運用することにした。
「わくらく」(仕事[ワーク]を楽しもう[ラク]から名づけられた造語)では、メイクなど会員の好きなことを仕事にするお手伝いをしている。ホームページなどの作成、コワーキングスペース(仕事場)の提供、販売先の紹介などの相談に乗っている。
「わくらく」は月5500円(税込)の有料会員制度で、サブスクリプションモデルをしている。また、関西の女性起業家に対象を絞り特徴を出したり、「わくらく」を知ってもらうために会員にSNSで発信してもらう仕掛け(ランチ会やセミナーの開催など)を工夫したりしている。
2 天職を見つけるために
何が向いているかはやってみないとわからない。美容が好きなのでアロマセラピーで起業したが、仕事にするほど好きではないと気づいた。人を集めてイベントをするなどのマネジメントの仕事は向いていないと思っていたのに、やってみたら向いていた。目の前のこと、与えられたことを一生懸命やっていったら、自分に適したものが見つかった。
やっていくなかで、これをやってみたが向いていないなと思ったら、その隣にあるものをやってみるということを繰り返していく中で自分の適性に出会える。
3 起業についてのアドバイス
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経験者に話を聞きに行く。公的創業支援施設や商工会議所にある起業の無料相談コーナーを利用するとよい。また、実際にオープンしている人や、コンサルタントに聞く。
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色々な団体のビジネスプランニングコンテストにエントリーする。
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これから伸びていく分野は、生活に密着したサービス業。
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起業はタイミング(時間)が重要。
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資金についてはよいプランであれば、国や公共機関によって起業を応援する補助金が用意されている。クラウドファンディングもある。
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経営者感覚を身につける。そのためにできることとして、文章を書くなど自分の得意なことをcoconalaなどのサイトで販売してみる。ハンドメイド商品を売るminne、メルカリなどもある。人の価値は色々で、欲しい人がいれば売れる。物を売るのは、人の価値観を知ることからはじまる。
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稼ぐ力は生きる力。稼ぐ力を上げるために、①期限を決めて集中する力、②仲間と成長していく力、③色々な価値観を受け入れチャレンジする力を身につける。
起業したことで、①自分の行動が世の中に直接役立つことが実感でき、②世の中の仕組みがわかり、③自分の判断で自立して生きることができ、④事業主として対等な立場でたくさんの人と出会え、⑤自分のペースで働けるようになり、世界が広がった。
起業を人生の選択肢一つとして入れることを提案され、締めくくられた。
4 質疑応答
学生(経済学科2年、男)心斎橋で行った10日間の体験イベントのリスクはありましたか?
三根社長:心斎橋のイベントのリスクは、お客さんが来ないこと。人が来ないと信用を失うなどがあるが、それは追々カバーできる。一番は金銭的なもので、今持っている現金を考えて、カバーできるかどうかで判断したらよい。心斎橋のイベントでは売上の2割を場所代として支払うことになっており、それ以外は出て行くお金はなかったのでリスクはほとんどなかった。
学生(経営学科2年、男)コロナ禍で直接人と接触して宣伝する機会が減っているが、お客様に知ってもらうにはどのような方法がありますか?
三根社長:人との接触が必要なビジネスか、接触なしでもできるものかを考える必要がある。マッサージや美容師は個室などで安全であることをPRして、その代わり客単価を上げる形になると思う。オンラインでできる経営相談や料理教室などは、ポータルサイト(ストリートアカデミーなど)を使ってまずは知ってもらう。
学生(経営学科2年、女)起業したけれど誰も来ないときに後悔されましたか?どのように克服されましたか?
三根社長:後悔する気持ちはありましたが時は戻せないので、やれることを考えるしかないと思った。友達にメールを送るとか色々なところに企画書をまくとか、小さいことでもノートに書いて実行していった。
また、上手くいった人の本やブログを読み、そこに書いてあることをとりあえずやってみた。
最初は色々なところに営業活動に行っても空振りが多かった。でもやっていくうちに、こう言ったら相手に受け入れられるとか嫌な反応をするということが、経験として溜まっていって、打率が上がった。行動の量は打率を上げる、いい反応が来店につながる。小さなことでもできることをリストアップして、まず行動してみる。
行動しても振り返ることが重要。相手の反応を振り返ることで営業の効果が上がる工夫をした。
起業に必要なことや天職を見つけるためのアドバイスなどをいただき、受講生にとって有意義な時間となりました。
(経済経営学部経営学科 教授 安達房子)