「バイオテクノロジー産業の最前線」はバイオ環境学部3学科の2年生以上に開講されている科目で、今後社会人になるためのキャリアアップに繋げるための15回にわたるオムニバス講義です。この授業では、産業界(食品、化粧品、医薬品、等)あるいは研究機関で第一線でご活躍されている方を講師に招きし、講演して頂いています。
2024年度の第6回は11月1日に行われ、地方独立行政法人大阪産業技術研究所の生物・生活材料研究部長で脂質工学についてご研究されている永尾寿浩先生に「身の回りの脂質製品とリパーゼを用いた脂質加工」と題してご講演いただきました。
大阪産業技術研究所は、企業技術の支援を目的に設立された元々は大阪市の研究所が元になっており、生物・生活材料研究部の他に、有機材料、電子材料、等の研究部門があり、いろいろな企業と共同研究を行っています。今回、永尾先生には、油脂一般の紹介と産業とどのようなつながりがあるのかについてお話いただきました。
まずは脂質の基礎知識について、油と脂の違いや、これに含まれる脂肪酸の種類まで詳細にご説明いただきました。魚由来の機能性脂質であるEPAやDHAについては、中性脂肪低下作用の他に目や記憶力向上にも効果があるとのことでした。
脂肪分解酵素であるリパーゼは、食品用途としてココアバターの代替油脂の製造や製パン時の加工助剤として使われているだけではなく、医薬品の消化薬としても使用され、身近なところでは家庭用洗濯洗剤など幅広く使用されています。チョコレートの製造は、カカオ豆から原料のカカオマスやココアバターを作る際にカカオ豆を木箱やバナナの皮を使って発酵して作ります。実はチョコレートは発酵食品であると言う興味深いお話も聴くことができました。
永尾先生からカカオ豆の実物を紹介いただきました。単に座学で学ぶのとは違い、学生たちもリパーゼという酵素を大変身近に感じ、理解を深めることができた様子です。
(バイオ環境学部 食農学科 藤田 裕之)