2023.11.13

地域の高齢者を対象に体力測定会を実施

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2023年10月21日(土)と22日(日)の2日間、京都先端科学大学の総合研究所アクティブヘルス支援機構(センター長 藤田裕之バイオ環境学部教授)は、地域の高齢者に向けた体力測定会を4年ぶりに京都太秦キャンパスで実施。2日間で400名を超える方々が参加し、健康医療学部健康スポーツ学科の学生にとっては体組成の測定技術を習得する場となり、言語聴覚学科の学生にとっては脳波計測の支援を学ぶ貴重な機会にもなりました。

この体力測定会は、地域の高齢者の方々の健康状態(体力、筋肉量、口腔機能など)を測定するもので、2015年の健康医療学部開設時に公開講座として実施したのが最初です。長期間、継続的に体力をはじめ筋量などの調査を行っている測定会は珍しく、ここで得られたデータを元に、環境やライフスタイルによるヒトの身体における水の代謝回転についてまとめた論文は、米国科学振興協会発行のサイエンス誌に掲載されました(2022年11月)。

また、介護予防プログラムに口腔ケアを提案された第一人者である吉田光由教授(藤田医科大学)、菊谷武教授(日本歯科大学)の歯科グループは、ここでの体力測定会で得られたデータをエビデンスの一つに引用しています。従来から他の大学や民間の研究機関にも場を解放し、多様な分野の専門家と共同で実施してきました。今年度は、京都先端科学大学に加え、京都大学、京都橘大学、京都工芸繊維大学、京都府立医科大学、日本歯科大学、広島大学、藤田医科大学、桃山学院教育大学、関西医科大学、国立健康・栄養研究所、丸太町リハビリテーションクリニックほかが参加しています。

総合研究所アクティブヘルス支援機構では、長年収集してきたデータを様々な研究で活用いただけるようにデータベース化を進めようとしています。この体力測定会を日本でも類を見ないユニークなフィールドとして、これからも実施していく予定です。

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測定風景(京都橘大学 健康科学部 理学療法学科 甲斐義浩准教授提供)

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本学生の測定支援

参加者の声

総合研究所アクティブヘルス支援機構 木村みさか 客員研究員
この測定会は、2002年、前任校であった京都府立医科大学体育館で、地域の高齢者を対象に開催したのが起源です。その後、コロナ禍での4年間を除き毎年実施してきました。今年度も様々な研究機関が参加した総合健康調査となりました。できる限り人生の最後まで元気でいること(健康寿命の延伸)は、個人にとっても社会にとっても望ましいことです。そのためにはフレイル対策が重要です。「フレイル」は、健康と要介護の中間にある過程で、加齢により心身機能が衰えた状態です。生理的な予備能力の低下が背景にあり、いわゆる老年性疾患を合併しやすく、運動機能の低下や要介護に陥りやすい状態となります。ただし、重要なのは、この過程には可逆性があることです。適切なアプローチにより健康な状態に戻ることが可能です。私たちは、この測定会を通じて、多方面からフレイルをチェックし、参加者にその情報をお伝えするとともに、地域には、蓄積してきたデータに基づくフレイル対策を提供できればと考えております。

総合研究所アクティブヘルス支援機構 山田陽介 客員研究員(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部運動ガイドライン研究室 室長)
体力測定会に参加してくださったみなさま、および、お手伝いしてくださったみなさまに篤く御礼申し上げます。これまで、この体力測定会得られた情報をもとに、多くの科学論文を執筆し、医学系の学術雑誌にて報告させていただいております。特に、この測定会に参加いただいた方に対して行った体内における水の測定結果は、昨年の米国科学振興協会発行サイエンス誌に論文が掲載され、世界中で話題となりました。今後とも、末永くどうぞよろしくお願いします!

健康医療学部健康スポーツ学科2年生 真鍋 颯さん(10月21日担当)
この体力測定会に参加してみて、高齢者に対しての接し方などを考える良いきっかけになりました。21日には200人ほどが測定に来られましたが、年齢層も幅広く、加齢による身体機能が低下された方もお越しになり、そのような方々にどのように接するのと良いのかを測定しながら考えました。今まで経験のないことでしたが、戸惑いながらもストレスを感じてもらわないような接し方が臨機応変に行えたと思います。

健康医療学部健康スポーツ学科2年生 飯村 翔さん(10月22日担当)
今回の体力測定会では体組成測定を担当しました。測定をしている中でたくさん学ぶことができました。例えば体組成計の機械に乗ってもらうときには、足を置く場所を手で示すことで、スムーズに乗ってもらえるようになりました。グリップを握ってもらう場面でも、自分がグリップを少し浮かせてお渡しすることで高齢者がすぐに持っていただけるようになりました。また、脇を少し広げて肘を伸ばした状態で立ってもらうときには、説明だけでは中々理解してもらえませんでしたが、少し体に触れて補助をすることで、スムーズにその姿勢に持っていけることが、測定を何回か行う中で理解できました。今回の測定は、自分にとってとても貴重な経験になりました。生かせる場面があったら生かしていきたいです。

藤田医科大学医学部 歯科・口腔外科学講座 吉田光由教授
私たち歯科グループがこの測定会に参加したのは2004年からです。参加した当初、参加した皆さまから「体力測定なのにどうして口の中まで診てもらわないといけないの?」とよく言われたものです。ところが最近では、フレイルとよばれる加齢による心身の活力(運動機能や認知機能等)の低下が口の衰えから始まるといったことも明らかにされ、オーラルフレイルに対する取り組みも盛んとなっています。私たちはここでの活動を通じて、口の健康が全身の健康につながることに関する多くの知見を得ることが出来ました。ここに深くお礼申し上げるとともに、今後もここでの活動を通じて、参加した皆さまさらにはすべての人に役立つ成果をあげていければと考えています。

(研究連携センター/オープンイノベーションセンター・亀岡 柴田雅光)