「バイオテクノロジー産業の最前線」は、バイオ環境学部の2年生以上が対象の科目です。社会に出てからのキャリアアップを目的に、15回にわたってオムニバス形式で開講しています。産業界(食品、化粧品、医薬品、等)あるいは研究機関の第一線でご活躍されている方を講師にお招きし、講演いただいています。
第7回は、ホップの機能性に関する研究・開発でご活躍のキリンホールディングス株式会社基盤技術研究所の谷口慈将研究員をお招きし「ホップに由来するビール苦み成分の科学」と題してご講演いただきました。
同社の飲料未来研究所での研究成果の中で、お茶からカフェインを除去する技術について紹介いただきました。カフェインに過敏な方や妊婦さん向けに(うまみ成分や機能性成分を残しつつ)、お茶からカフェインを取り除くと言う画期的な方法を開発。多くの賞を受賞しました。この他、糖質ゼロのビールの開発についても紹介いただきました。
ご専門の「結晶スポンジ法」については、化合物の化学構造を解析する手法から説明いただきました。ビールにはホップ由来の種々の成分が含まれています。この手法を用いて、これらの成分が、どのような物質に変化して風味に影響するかを初めて明らかにしました。物理化学的で難しい内容でしたが、谷口先生の熱弁に、その技術の一端を感じ取れたのではないかと思います。
この手法を用いて分析できたホップには、脂肪低減効果のある成分が含まれていることが分かっています。また、それがヒトによる試験でも認められたとのことで、製品化までの技術が形成されました。ビールが単なる嗜好性飲料ではなく、機能性飲料であることを知り、学生たちも驚いていた様子でした。
次回は、2023年11月17日(金)13:20から、住友ファーマ株式会社常務執行役員の西中重行先生を講師にお招きして開催します。
(バイオ環境学部 教授 藤田裕之)