バイオサイエンス学科では、1年生から実験科目がスタート。2年生で本格的な専門実験に取り組み始め、専門実験を修得後に配属先の研究室での実験の日々。実験三昧の4年間を送れるのがバイオサイエンス学科の特徴です。
3年生の専門実験は春学期週4日、秋学期週3日。これを1年間続け、バイオサイエンス領域の基礎的な実験手法や機器操作などのスキル、データ処理方法を習得します。この専門実験は、応用微生物学、分子生物学、食品・栄養科学、有機化学、植物バイオの5つの分野から構成されています。今回は最後の分野、植物バイオ実験を紹介しましょう。
植物バイオ実験では、3つのテーマについて実験を行います。第1部はプロトプラストの調整と細胞融合・植物の細胞培養、第2部は光合成活性測定と解析法、第3部は植物の栄養代謝の解析です。
今回は第1部で行った植物の細胞培養を取り上げます。
細胞培養とは、切り出した生物の組織を無菌的に培養することをいいます。植物は通常、葉や根を作る細胞が器官を形成することにより形を作っています。このような植物の細胞が、それぞれの役割を決定することを『分化』と呼びます。分化した植物組織を適切な植物ホルモンや栄養を含む培地で培養すると、細胞がそれまでの細胞周期をはずれ、再び細胞分裂を開始し、未分化な不定型の細胞塊「カルス」を作ります。分化した細胞が未分化な細胞になる過程を『脱分化』といいます。カルスをさらに適当な植物ホルモンを含む培地で培養すると、その濃度によって根・茎・葉に分化します。再び分化能力を獲得する現象を『再分化』と呼び、適切な条件で培養することにより、完全な植物体を再生することができます。
このように植物は、すべての細胞があらゆる組織に分化する分化全能性を保持しています。この性質は、古くから、育成が難しい植物や優良植物体などの増殖(クローン増殖)、無病苗の作成など産業的に利用されています。
本実験ではブロッコリーを材料に、組織培養を行い、カルスの形成、再分化の様子を観察しました。
実験では最初にブロッコリーを殺菌処理し、クリーンベンチ内でブロッコリーの切片を作成し、植物ホルモンのオーキシンを調整した培地上に置床しました(写真1)。

この実験では、長期間の培養を行うため、これまでの実験で行ってきた以上に丁寧な無菌操作が要求されますが、これまでに培った実験技術を活かして作業を行いました。
置床した組織片を一ヶ月培養したところ、オーキシンを含まない培地(-)で培養した組織片は、緑色化や肥大はしたものの形には大きな変化はありませんでした。一方で、オーキシンを含む培地(+)で培養した組織片は、組織片の周りに白い細胞塊が見られカルスを形成していることが観察できました。また、カルスから太い根やけば立った根毛が観察され、根へ分化している事も確認できました(写真2)。 これは、培地に含むオーキシンの濃度によるものと考えられます。

第1部での実験を通して、植物細胞の分化、植物細胞工学の基本技術、これらの技術の産業利用についても理解を深めました。
学生達は、3部から成る植物バイオ実験を終え、割り当てられた課題について班ごとに最終発表を行いました。これまでの専門実験で、何度も課題発表を行ってきたため、情報収集やまとめ方に工夫が見られ、落ち着いて発表に臨んでいました。
一年間の専門実験を終えて、実験手法はもちろん、理論の理解、結果の観察、論理的に考察する力、そしてそれらを人にわかりやすく伝える力もつき、大きく成長する姿が見られました。
この経験を存分に活かし、これから始まる卒業研究、就職・進学へと繋げることでしょう。
(バイオ環境学部 教務センター 実験事務室 菊池佑一、村上ゆい)
(バイオ環境学部 教務センター 事務室 藤原幹)