亀岡市および亀岡商工会議所と連携し、地域経済活性化に向け、地域の中小企業の事業展開支援を行っているオープンイノベーションセンター・亀岡（OICK）は、地元企業の亀岡電子株式会社(亀岡市)から、これまで電機メーカとのビジネスを通じて磨いてきた精緻な配線技術や基板の検査装置開発のノウハウを他の事業領域に展開できないかという相談を受けていました。OICKのネットワークを活かし、これからさらにニーズが高まると考えられる電気自動車（EV）や京都エリアで研究開発が盛んなパワーエレクトロニクス分野での新たなビジネスパートナーを探索していました。
京都エリアでは、文部科学省知的クラスター創成事業の第Ⅰ期（2002年度～2007年度）および第Ⅱ期（2008年度～2012年度：地域イノベーションクラスタープログラムを経て地域イノベーション戦略支援プログラムに名称変更）の助成を得て、地域の産学公連携研究を推進し、2015年度～2019年度 国立研究開発法人スーパークラスタープログラム「クリーン・低環境負荷社会を実現する高効率エネルギー利用システムの構築」を展開。SiC（シリオコンカーバイド）パワーエレクトロニクスの本格普及と社会実装を進めていました。そこで、知的クラスター創成事業において産学連携マネージャーを務めていたアクセルジョイン(京都市)高山卓之代表に問い合わせ、スーパークラスタープログラムに参画していたパワーエレクトロニクスを用いてパワーコンディショナーの設計と製造を行っている株式会社アイケイエス(京都市)との協業を検討しました。
アイケイエスの「I_DENCON（電力変換装置）の量産化に向けた生産技術開発」は、2024年度(公財)京都エコノミック・ガーデニング Ⅲ 本格的事業展開コースに採択されています。I_DENCON とは、AC（交流）/DC（直流）、DC/DC、DC/DC変換を1つの装置で行うことにより、太陽光発電などの再生可能エネルギーを最も効率良く蓄電池又はＥＶに充放電でき、余剰電力は構内に電力供給できる装置です。ただ、I_DENCONで使用する基板の検査に8時間以上かかるという課題があり、その短縮技術を模索していました。そこで、2024年6月に関係者が亀岡電子を訪問し、アイケイエスに提案可能な技術について確認し、アイケイエスと亀岡電子のマッチングを行いました。
このマッチングにより、亀岡電子が開発した検査装置をI_DENCONの生産工程で使用することで、これまで8時間かかっていた基板検査を1時間で完了することができるようになり、大幅な効率化につながりました。I_DENCONは、今後年間100台以上を出荷される予定です。この変換装置は10kWの仕様ですが、30kW以上の大型変換装置では、本学 松波弘之特任教授が研究開発したSiC(シリコンカーバイド)を用いて製品化する予定です。
今回は、大学を中心とした大型開発プロジェクトで確立した技術を、プロジェクトに参画した企業が地域のものづくり企業と共創し、商品化する全国でも稀有な事例になりました。 今後もOICKは、地域活性化支援のための取り組みを推進します。
(太陽光パネルで発電した電気を蓄電池に取り組む
モデル)
株式会社アイケイエス 今井尊史 代表取締役社長
亀岡電子様との協業により、弊社の小ロット主体の生産体制から、量産製造の道筋がつきました。今後も量産製品が出てくる予定ですので、協業を更に進めたいと考えています。
エネルギー問題は日本が抱える最大の課題であり、弊社は自然エネルギー化を進めるため様々な取り組みをしています。京都発でこの課題に対して、「自然エネルギーの活用」「省エネ化」「無停電の世界」を実証していきたいと考えています。そのために地域各社の技術と連携し、活動して行く所存です。
亀岡電子株式会社 川勝洋 代表取締役社長
初めて今井社長からお話を伺った時にはEV自動車の充填機などに使用される電力変換装置などを設計しておられ、SDGsに沿った取組で弊社理念にも合っているので是非協業したいと思いました。
ご依頼を頂いた案件は電力変換装置の量産化に向けて手作業で配線の切替えを行い、十数項目の検査をされていたのを自動化したいという内容でした。
費用と要求短縮時間から自働化する範囲と手作業で残す範囲を考え、検査機を設計し、期待されていた効果を出せたのは良かったです。
品質向上と人手不足解消には自動化が必要と思います。今後も量産化される製品があれば、自働化のお手伝いをさせていただきたいと考えています。
（オープンイノベーションセンター・亀岡(OICK) 柴田雅光）