バイオ環境学部の2年生以上を対象にした「バイオテクノロジー産業の最前線」は、学生たちの社会に出てからのキャリアアップを目的に実施しています。15回にわたってオムニバス形式で開講している本講義は、毎回産業界(食品、化粧品、医薬品、等)や研究機関の第一線でご活躍されている方を講師としてお招きし、ご講演いただいています。
第10回目は、11月29日(金)に、ホップの機能性に関する研究・開発をされているキリンホールディングス株式会社 基盤技術研究所の谷口慈将研究員をお招きし「ホップに由来するビール苦み成分の科学」と題してご講演いただきました。
最初に、キリンホールディングス㈱がビールなどのアルコール飲料だけでなく、お茶などのソフトドリンク、さらには医薬品など幅広い製品を販売していることについて紹介いただきました。また、酵母をはじめとした発酵技術を生かして、乳酸菌を使った機能性食品素材も開発しているとのことでした。

また、ご自身の専門分野である「結晶スポンジ法」については、化合物の化学構造を解析する手法から説明をいただきました。ビールにはホップ由来の種々の成分が含まれていますが、この手法を用いることで、これらの成分が、どのような物質に変化して風味に影響するかについて初めて明らかにしてきたとのことでした。物理化学的な内容で少し難解でしたが、谷口先生の熱い語り口によりその技術の重要性について感じることができたと思います。

「結晶スポンジ法」を用いて分析により、ホップには、脂肪低減効果のある成分が含まれていることを発見し、実際にそれがヒトによる試験でも認められたとのことで、ビールが単なる嗜好性飲料ではなく、機能性飲料であることを知り、学生たちも驚いていた様子でした。

次回は、12月6日(金)、不二製油(株) 蛋白加工食品カンパニー蛋白素材部門の中森俊宏先生を講師にお招きして開催します。
(バイオ環境学部教授 藤田裕之)