2024.11.21

「スタートアップ創出を念頭にした教員、学生の施設見学」を実施

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11月11日(月)、本学の三村徹郎副学長・バイオ環境学部長、バイオ環境学部 佐藤隆徳特任教授、Md ASADUZZAMAN (エムディー アサデュザマン)准教授、WONG Yong Jie (ウォン・ヤン ジエ)講師と同学部の学生3名が、安田産業グループ株式会社大剛 伏見工場(京都市伏見区)を訪問し、飲料容器を材質単位で選別するリサイクル施設と併設されている水耕栽培施設を見学しました。バイオ環境学部では海洋プラスチック汚染の原因となるプラスチックごみの研究やペットボトルの回収リサイクルの研究、オープンイノベーションセンター・亀岡(OICK)のスマートアグリハウスを用いて植物栽培などの研究をしています。今回は、研究シーズを深化し事業化するために、実際に空き缶やペットボトルの回収からリサイクル材料資源化の施設と無農薬密閉型植物工場での播種から収穫までの現場を見学しました。
なお、この見学会は、本学が参画する国立研究開発法人科学技術振興機構「大学発新産業創出プログラム(START)」における京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション(KSAC)の事業として実施しました。
大剛 伏見工場では、京都市内から集められた空き缶やペットボトルをまとめて分類しリサイクル材に整形しています。集められたペットボトルは別工場でフレークになり、材質ごとに分類された後、飲料容器や日用品の原料となります。植物工場ではフリルレタスやエディブルフラワー(食用花)を年間12毛作で生産しています。
安田義崇 安田産業(株)地球環境室室長代理からは、ごみを出す側と資源として使う側との間に、廃棄・加工の担い手が介在しないとサーキュラーエコノミー(循環型社会)はうまく機能しないと説明がありました。今回の訪問は、単なる廃棄物回収やリサイクルだけではなく、地域ブランディングとして捉える良い機会となりました。

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分別され再資源化される ペットボトルのブロック

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植物工場の様子

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意見交換の様子
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参加者記念撮影

参加者の声

WONG Yong Jie (ウォン・ヤン ジエ)講師

安田産業の取り組みを見学し、特にリサイクルプロセスに関する技術に感銘を受けました。飲料容器の材質単位での選別技術は、リサイクル効率を大幅に向上させる重要なプロセスであり、ペットボトルや缶など異なる素材が混在した廃棄物を精密に分別することにより、再生可能資源としての価値を最大化し、廃棄物の埋立てや焼却の削減に寄与しています。私の最近の研究では、水環境分野の先生方や学生と共に、ペットボトルとキャップの効率的な分別を目的として、新しいタイプのゴミ箱の設計に取り組んでおり、これが現在の飲料容器に関する課題解決に貢献できることを期待しています。また、ゴミの選別精度を向上させるために高精度カメラを活用したアプリケーションの開発とその最適化も行っており、この技術が将来的により効率的なリサイクルの実現に貢献できると考えています。さらに、リサイクル後の素材は高品質な原料として再生され、新たな製品へと転換されるため、資源循環型社会の実現において不可欠な要素となります。

Md ASADUZZAMAN (エムディー アサデュザマン)准教授

 野菜工場にペットボトルのリサイクル工場が併設されている安田産業の工場は非常に印象的でした。リサイクル水を使用する垂直型の水耕栽培システムでは、LEDライトも使用し、様々な葉物野菜や食用花が栽培されていました。ここでは、健康にいいとされている、高ミネラルや低カリウムの機能野菜を栽培することにより人々の関心を集めています。使用済みの栄養溶液のリサイクルには、根滲出液(こんしんしゅつえき)の蓄積を軽減するために電気分解が用いられ、継代培養(けいたいばいよう)を可能にしています。この様な産学共同による研究は、持続可能な環境を維持し、持続可能な都市とコミュニティに関するSDGの目標11に取り組む上で価値があります。

バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科4年生 CHEN Yuさん

高校の授業で、ラインを使って物質を分類する方法を学んだことがありますが、実際に見たたことがなかったために、具体的にそのラインのイメージが想像できませんでした。今回の見学では、現場でゴミを分類する機械を間近に観察でき、その機械の巧妙な仕組みに感動し、教科書だけでは理解できないことを体験しました。今まで「ゴミは捨てられたら消える」と思っていましたが、分類すればゴミは資源になり、まだ次の循環に使えることを意識する機会になりました。 

バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科4年生 細川葉名さん

見学中にも、次々と到着する収集車が見られ、飲料容器リサイクルの社会的需要の高さを改めて実感しました。分別ラインでは、機械の高い分別能力に驚く一方で、飲料容器として集められた袋に一般ゴミが多く混入している現実を目の当たりにし、ショックを受けました。この体験を経て、製品が生産される際には、使用後の廃棄やリサイクルを考慮した仕組みづくりも含めてその価値を評価する必要があると考えさせられ、また分別技術が発展してもなお、ゴミを出す立場である私たちの分別意識は失われてはならないと痛感しました。この貴重な体験を通じて多くのことを学ばせていただき、ありがとうございます。

バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科4年生 吉村佳悟さん

私は卒業研究でペットボトルの分別ついて研究をしており、今回、安田産業(株式会社大剛 伏見工場)のペットボトル、雑紙、カン、ビンのリサイクルの工程を見学させていただきました。リサイクル工場では、人の力と機械の力を使って、非常に効率よくリサイクルされていました。先方関係者との意見交換では、産業廃棄物を廃棄物として扱うのではなくペレット状にし、ほかの企業に持っていきまた違う商品への生まれ変わり再び経済に循環させるというアップサイクルのビジネスは、授業ではわからない実際の企業活動を知ることができる良い経験になりました。この経験を活かし、卒業研究をうまく発展させていきたいです。


安田産業(株) 安田義崇 地球環境室室長代理

国内では「サーキュラーエコノミー」という言葉が、ようやくでてきました。物が生まれるところから、最終的にゴミになるまでを追いかけるのではなく持続可能性を図り、必要なものと不必要なものを選定し、小さな輪であっても連続的に循環を作用させることがサーキュラーエコノミーの文化には必須条件です。
国内と国外の違いは、各国における制度が大きな割合を占めるかもしれませんが、「ウェルビーイング」という思想というか、生き方による思考回路の差を大きく感じています。より良い自分、より良い仲間、より良い地域。御学だけでなく、学生の皆様とは「コミュニケーション」と「チャレンジ」ここを頼りに、共創から協創への変革を共に作っていきたいです。

(オープンイノベーションセンター・亀岡/研究連携センター 柴田雅光)