「バイオテクノロジー産業の最前線」は、バイオ環境学部の2年生以上が対象の科目です。社会に出てからのキャリアアップを目的に、15回にわたってオムニバス形式で開講しています。産業界(食品、化粧品、医薬品、等)あるいは研究機関の第一線でご活躍されている方を講師にお招きし、講演いただいています。
第4回は、味噌や醤油の製造などに欠かせない麹の育種や、その麹を使った商品開発でも御活躍中の、樋口松之助商店株式会社(以下、「樋口松之助商店」)研究室の室長、山下秀行先生に「麹菌と麹の利用」と題して御講演いただきました。
麹菌は日本酒を始め、味噌、醤油、最近では麹甘酒の製造に欠かせません。そのため「黄麹菌」として国菌に認定されています。麹菌が「もやし」と呼ばれるようになったその語源は、麹が発芽するイメージから「萌える」という言葉を元に「もやす(し)」になったようです。
また、醸造食品と麹菌との深い関わりについて説明いただきました。醸造商品は、異なる性質を持つ麹菌を使用しているので、各麹菌が持つ性質によって外観や味も違ってきます。例えば、たんぱく質や炭水化物分解酵素、さらには脂質分解酵素の活性も違うので、商品によって違う麹菌を使用しています。生育温度によっても、これらの酵素活性が異なってくるので、日本酒と味噌を造る時では温度管理も異なるとのことでした。
樋口松之助商店は、これまでの伝統的な食品以外にも新たに「塩麹」、あるいは飲む点滴としてよく知られるようになった「麹甘酒」や、麹を使ったチーズの商品化も実現。さらに、卵黄を麹で分解した商品開発も成功。既に多くの加工食品に添加されているとのことで、聴講している学生たちにとっても驚きの発見でした。
次回は、スペラファーマ株式会社分析研究所の馬渡彩先生を講師にお招きして開催します。
(バイオ環境学部 食農学科 藤田裕之)