2022年7月20日(水)、本学京都太秦キャンパス南館において、経済経営学部学会の2022年度第1回研究会が開催されました(対面ならびにオンラインによるハイブリッド開催)。今回は、本年度より本学に着任された経営学科の稲田講師による研究報告が行われました。
- 報告者
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稲田昂弘 講師
- タイトル
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ピアツーピア取引プラットフォームにおけるダイナミック・ガバナンスと多様性:エージェント・ベース・シミュレーション
報告概要
ソーシャルメディアが広く普及するに伴って、コンテンツモデレーション、すなわち過激なコンテンツを規制しながらも、発信の自由を担保することが求められている。本研究はエージェント・ベース・シミュレーションを用いて、ピアツーピア (P2P) の取引プラットフォームにおけるガバナンスの細かな調整を分析した。具体的には、従来の参加制約のレベルを変えたオープン、クローズドに加えて、制約を変化させるタイミングを変えたダイナミックという3つのガバナンス・シナリオが、参加者の量、質、多様性のアウトカムに与える影響を検討した。結果として、ダイナミック・ガバナンスによって、3つのアウトカムをバランスよく高められることが確認された。この結果は、参加制約のレベルだけでなく、制約を変化させるタイミングについても考慮する重要性を示す。また本研究は従来の研究のように、参加者の量と質のみをパフォーマンスの指標と考え、プラットフォーム企業がそれを最大化する“最適”行動をとれば、プラットフォーム内の多様性が低くなる可能性も明らかにした。社会のためのプラットフォームを実現するために、P2P取引プラットフォームのガバナンスの指針として、多様性という観点を付け加えることを提起する。
(経済経営学部 講師 大竹恵子)