2021年6月〜7月、心理学科「社会・産業基礎演習」の君塚洋一クラスでは、京都市右京区・太秦大映通り商店街を拠点に地域づくりを行うNPO法人「子育ては親育て・みのりのもり劇場」を訪問し、あわせてキャンパスに同法人の伊豆田千加理事長をお招きしてインタビュー調査を行いました。
この演習は心理学科「社会・産業プログラム」の2年生向け科目で、社会調査の基本を身につけ、心理学・社会学の学びを社会の現場でどう活かすかをイメージするフィールドワーク(現地探訪)を行います。
このクラスでは、文献講読やアンケート調査実習、地域の現場で住民の支援や内外の交流を行う専門家へのインタビューを通じて、社会生活においてどのように人とのつながりや居場所をつくり、お互いをケアしあって生きづらさを解消していけばよいかを考えています。
2009年に設立された「みのりのもり劇場」は、子育ての語り合いや親子のための延長保育の支援、フリーマーケットの開催、特産野菜を使ったコミュニティ・レストラン「キネマ・キッチン」の運営を手がける地域づくり団体です。あわせて、京野菜を活かした特産品の開発や、撮影所が集まる映画の街・太秦を語り継ぐ映画ミュージアムの運営も行うなど、親子にとどまらない住民の日常的な交流と地域の魅力や映画文化の発信の場づくりを行っています。
ゼミ生たちは、「キネマ・キッチン」で柴田弓理事から団体設立のいきさつや活動のあらましを伺ったのち、キャンパスに来訪された伊豆田理事長のレクチャーを聞き、たくさんの質問に縦横無尽に答えられる伊豆田さんから、社会や大学での人づきあいへの姿勢や居場所づくりについて数多くのヒントをいただきました。
●伊豆田千加さんへのインタビューについてのゼミ生のコメント(順不同)
伊豆田さんは「わくわくは力だ」をモットーに実にたくさんの活動をされ、その原動力には「人生を楽しもう」という価値観や「人の助けになりたい」という思いやりが強く感じられました。
親育て・子育てを前向きに楽しむ伊豆田さんが語られた「子どもにとってよい親は、町にとってもよい人」という言葉に納得しました。「自らの楽しいスイッチを入れられるのは自分だけ」とも話され、人に求めるよりも先に自分が気づいて行動に移すことでつながりはもっと広がっていくのだと学びました。
「自己効力感を高めるにはどうすればよいか」という質問に「今まで、たまたままわりの環境や大人たちがうまく作用しなかっただけで、あなたたちには十分力がある」と言ってくださり、少し救われたように思いました。
「自己効力感」を高め、自信をつけるには「小さな成功体験を積み重ねる」ことだというお話にとても共感しました。
「頼まれごとは試されごと」という言葉がとても印象に残りました。私自身も重く考えすぎるのではなく、自分やまわりが楽しいと思えることをしていきたいと思いました。
子育ての悩みを笑ってシェアする「どらりん劇場」の活動で、「教える」のではなく、あくまで本人に「気づかせ」、本人が自ら改善していくことが大切だと話されていたのが印象的でした。
「自分らしく生きればいい」という覚悟を持ち、人とつるまないけれどそこにいるだけでいい、というスタンスが地域でも広がれば、これこそが「ゆるくつながる」ことなんだと感じました。
伊豆田さんははじめから居場所やつながりをつくろうとしたのではなく、さまざまな活動を行っていくうちに結果として居場所やつながりができたと語っておられ、自分のやりたいことをこなしていくことの大切さがわかりました。
(人文学部心理学科教授 君塚洋一)