夢は語るだけでも楽しい 実現したらもっと楽しい

モーサテ永守塾4限目のテーマは「チャンスをつかむ考え方」です。およそ半世紀前に起業し、一代で世界トップの総合モーターメーカーを築き上げた永守理事長。近所の人には「ホラを実現した男」と言われているそうですが、夢を実現するのに大切なのは、まずその夢を語ることだそうです。

永守理事長:僕の近所の人は、こう言っています。「私の近所に永守さんって人がおってね。この人はホラを実現した。ホラを実現した男や」と。一番ゼロから見ているからね。
モーターをトラックに載せて、菜っ葉服を着て走っている姿を見ている。
東京への運賃がもったいないからと、農家のトラックを借りて、モーターを積んで、2人で運転しながら行くわけやね。2時間ずつ交代で運転して、寝て、東京に行く。
その苦難をエンジョイするんです。エンジョイするには、夢を語るわけや。「今こうやって走っているけど、そのうち、こうなるぞ、ああなるぞ」と言いながら走る。それはもう元気が出てくる。
夢というのは語るだけでも楽しいんですよね。それが実現したらもっと楽しい。
学生の君たちには、そういう人生を送ってもらいたい。
「バカなことを言っている」と思われてもいいんです。まず自分の夢を語って、それを実現するにはどうしたらいいか考えていけば良い。若いんだから。僕が創業したのは28歳。君らは大学に入ったばかりだ。

「できる」と1000回言う

工学部2年  上野さん:遠くを見据えて、それに向かって努力していく。その先見性を得る方法と維持する方法は何ですか?

永守理事長ノートパソコンが出てきたとき、すごく分厚かった。「もっと薄くせいや」となってきた。そうしたら薄いハードディスクが欲しい。ハードディスクを薄くするには、モーターを薄くしないとできんわけよ。
「今からハードディスクのモーターを3.5ミリまで薄くする」と宣言した。その時まだ6ミリか7ミリでね。「できるか?」って聞いたら、みんなが「いや、それはちょっと」って。
そこで「みんな立て」「できます、できます、100回言え」と。それから1000回くらい言い続けていたら、「なんとかやりましょう」ってなる。先見性っていうのは、そんな感じやで。誰も信用しないからやめてしまう。それじゃダメだ。
僕は「できる」から入るからね。そうすると、どんどんアイデア浮かんでくる。だから世界シェア85%を今とっているわけや。
同じものを作っていたら負けるに決まっている。だからリーダーは少し頭がおかしいくらいでないとあかん。正常なことを言っているようじゃダメだ。

自分を信じる

永守理事長:成功できる人は、物事への集中力がものすごく強いんですよ。対象を愛するというか、僕にはこれが天職なんです。会社からじゃなくて、天からもらった職業。
小学校の時にモーターを作る授業があって、「一番よくできた」と褒められて、そこから始まってずっとモーターで来た。それで世界一のモーター会社になったわけや。だから、天職。
あとは手相が違う。「枡掛(ますかけ)」や。線が横にバシーっと入っている。

手のひらを横に貫く、枡掛筋(ますかけすじ)。広辞苑でも、長寿の手相とされています。

永守理事長これは歴代では徳川家康とか、大隈重信の手相。大隈重信と同じ手相だから、兄貴が僕に「重信」という名前をつけてくれた。苦しくなったら、手を見て、「そうや、わしはこれや」と(笑)。だから絶対失敗しないと。そういう自信。自信と確信やな、人生は。

本当に苦しいときには、自分が持って生まれた「運」を信じる。そうした自信と、自分の運命に対する確信があってこそ、苦難を乗り越えることができる。
永守理事長の成功の裏には、心を強く保つための、そんな秘訣がありました。

チャンスは必ず隠れている

工学部2年  高橋さん:新型コロナウイルスやウクライナ情勢、技術革新など、目まぐるしい変化があると思います。永守理事長は変化をどのように感じ取って自分のものにしていくのかを教えていただきたいです。

永守理事長どんなことが起きても、誰かが得して誰かが損しています。必ずプラスマイナスゼロになるんです。損している人と得している人が、大体チャラになっている。全部がやられることもないし、全部が得することもない。
問題が起きるときには、チャンスが必ずどこかに隠れている。そのチャンスをつかまないとあかんわけや。
明日は「明るい日」と書くんです。僕は「嫌なことが1回起きたらいいことが2回返ってくる」といつも思っています。実際に返ってきます、いいことがね。
だからあんまり深刻な気持ちを持たないで、いっそう頑張ろうと思う。それが一番正しい生き方でしょう。

自分で自分を動機付けする

経済経営学部3年  市川さん:私自身も一度起業に挑戦しようとして結果的に失敗してしまったのですが、死に物狂いでやるというか、モチベーションの維持がすごく難しいと感じました。永守さんはどのようにして、モチベーションや熱量を維持されていますか。

永守理事長自分で自分を動機づけできること。トップに立とうと思ったら、それが必要やね。普通なら、勉強は親から、仕事は上司から動機付けされる。そうやって外から動機付けされることはいっぱいあると思うけれど、それではトップに立てない。

市川さん:今の話を聞いて思ったのが、覚悟が大事かと…

永守理事長覚悟どころじゃない。命をかけてやる。
やっぱり、「自分で自分を動機づけできますか」というのが結論。

市川さん:自分で自分を動機付けできたとしても、夢が100%叶うということはまずない。

永守理事長それはまずない。最初の頃は10%とか5%。そこから始まる。

市川さん:その10%や5%のときは、成功も失敗も頭の中にあって、迷いが生じます。

永守理事長あんまり失敗すること考えたらあかん。「成功するんだ」と。それが動機付け。
だから「私は失敗しないです」。そう言っている。どんな会社でも、どの業種でも、うどん屋であろうと何であろうと、何をやっても成功すると。自信満々や。
最後、それでも自信を失いそうになるときは、母親が生んでくれたこの手相をじっと見て、「うーん、太陽の子やで、わしは。大丈夫や」と。
会社では僕は、机は必ず太陽の方向に向けて、座っているんです。

市川さん:ありがとうございます。

永守理事長成功を祈る。

市川さん:がんばります。まず、机の向きを変えます。

永守理事長お前、それだけやってもダメや(笑)

テレビ東京「Newsモーニングサテライト」

学生の感想


経済経営学部 3年市川さん:
思い込むことが大事なのかなと。「できる」という思い込みの強さ。僕も一度起業で失敗した原因がそこで、いろいろ考えすぎたところがいけなかったのかなと思ったので、単純さというか、思い込みの強さ、自分を動機づけることが大事だと思いました。

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